中東情勢の悪化に伴い、エネルギー価格及び石油由来の製品価格の高騰、さらに供給不安が顕在化し、グローバルなサプライチェーンに大きな影響が及んでいます。企業活動への制約が徐々に強まる中、一部のスタートアップにとっては事業存続に関わる重大なリスクともなりつつあります。 このように急激に経営環境が変化する状況下、CVC担当者が今ただちにすべきことは、投資先に「何が起きているかを即座に把握すること」、すなわち緊急ヒアリングに他なりません。
1.環境変化の影響の測定と評価
投資先のうち中東情勢の影響を受けやすいのは、直接的に石油やガスなどの化石燃料の消費を必要とする企業と原材料や副資材に石油由来の製品を利用している会社です。しかし、直接的な影響を受けなくとも、直接的な影響を受けている会社から製品やサービスの供給を受けている場合等、間接的な影響が想定されます。そこで、まず必要なのは、各投資先について、現下における客観的な影響を測定し評価することです。 取締役会や経営会議等にオブザーバーとして参加している場合には、その機会を通じて情報を収集します。参加権がない場合には訪問又はオンラインのミーティングを各社とセット。投資先の報告を受けるだけの受動的なモニタリングではなく、能動的なヒアリングが不可欠です。重点ヒアリング項目は、1)中東情勢の現時点での影響(コスト・供給へのインパクト)、2)情勢がさらに悪化した場合の対応策の準備状況、3)情勢変化の影響を考慮したランウェイの見込み。の3つです。
2 重点対応先の選定
緊急ヒアリングに基づいて、CVCとして対応を急ぐ重点対応先を選定します。影響度が小さいと評価された投資先を除外するとともに、影響の重大性と緊急性に応じて優先度を設定します。優先度の設定にあたっては、リード投資先とフォロー投資先の別は勿論のこと、ポートフォリオにおける投資ウェイトも考慮します。フォロー投資先においてはリードVC等との緊密な情報共有も不可欠です。 優先度の設定は、例えばS、A、B、Cのランク付けにより行います。Sはただちに対応。Aは3ヶ月以内に対応。Bは当面は状況を注視しつつ、必要に応じて対応。Cは対応除外とします。Bについては、3か月後を目途に再度ヒアリングを行って、AまたはSにランクアップをすべきか検討します。
3 重点投資先へのサポート
CVCの強みは、自社のリソースを活用したサポートができることです。ヒアリングの結果、原材料や副資材の調達等に不安があり、収益に影響が出そうな場合、あるいは研究開発の進捗への影響が考えられる場合等、CVCの母体の上場会社等の事業部門またはその取引先からの供給によって、影響を抑えることができる場合があります。コストアップを販売価格に転嫁する必要がある場合等、受注の減少を事業部門経由での販売で補うことができる場合もあります。 キャッシュフローへの影響が懸念される場合、まずは、CVC自らの追加投資を検討することが最も早い解決策です。勿論、フォロー投資の場合は、リードVC等との連携が必要です。協調して投資をすることも検討すべきでしょう。ただし、追加投資の意思決定及び手続きには数カ月が必要なことも少なくありません。 そこで緊急性の高い場合にお勧めしたいのがDPO(Direct Public Offering)です。DPOは金融商品取引業者を通さずに有価証券を直接公募することで、資金を調達する手法です。1億円未満の少額の有価証券の募集を、金融商品取引法に定める有価証券通知書を管轄財務局に提出して行います。当社CFSPではDPOの手続きを体系化しドキュメントを標準化したDPOパッケージを開発。利用が急増しているところです。スタートアップ向けでは、次回ラウンドの調達により買い戻す「取得条項」の付された種類株式により、つなぎ資金を提供するスキームの活用が有効です。ご関心がある場合は、当社のDPOサポート特設サイトhttps://dpo.cfsp.co.jp/ をご参照下さい。
変化はチャンスともいいますが、その変化を見逃すとピンチにもなります。適時かつ正確な情報を入手し、迅速に合理的な行動をすることこそ、今、CVCが既存の投資先に対して行うべきことです。オープンイノベーションを目的とするCVC投資においては、追加投資によってリードCVCとしての地位を確立することを含め、投資先への関与度を高めることで戦略的な提携を強化し、やがてはM&Aと発展させる好機とも言えます。当社としてもCVC投資戦略研究会の活動を通じて、引き続き全力で皆様をサポートして参ります。















